障害者雇用

精神疾患での障害者雇用は可能か?実際の体験談をもとに解説

結論からお伝えすると、精神障害者でも障害者雇用で雇ってもらえました!

珍しいケースかもしれませんが、私の場合は転職せずに、今まで働いていた会社に「障害者雇用に切り替えて欲しい」とお願いしました。

子持ちかつ精神障害者ということで、かなり難しいのではと覚悟していました…雇ってもらえてよかったです。

障害者雇用で就職するまでの流れ

私は自分が働きたい時期から逆算して求職活動を進めていきました。

  • 障害者雇用を検討
    「ナカポツ」に相談・登録する(詳細後述)
    産後は身軽に動けないだろうと思い、産前に大きなお腹を抱えつつ利用登録をしてきました。産後の生活は想像以上に大変だったので早めに登録しておいて本当によかったです…
  • 就労開始 1年前
    求人情報を集め始める
    求人情報の収集に使ったものは、ハローワーク・人材エージェント・求人サイトでした。(ただ結局、私は社内で雇用転換したのですが…)
  • 就労開始 6ヶ月前
    支援機関に連絡
    いったん転職せず今の会社で障害者雇用に切り替えてもらえないか交渉すると決断。その旨を支援機関に伝え、交渉に同席してもらえるように依頼しました。
  • 就労開始 4ヶ月前
    会社と交渉開始
    会社に連絡を取り、障害者雇用に切り替えて欲しい旨を連絡。書類選考と面接が2回ありました。
  • 就労開始 1ヶ月前
    正式に雇用契約が決まる
    正式に障害者雇用への切り替えが決定。1日の勤務時間を擦り合わせましたが、給与額については会社側から言及なし。そのため、聞きづらさはありましたがこちらから確認しました。

「ナカポツ」とは?

正式名称は「障害者就業・生活支援センター」といいます。障害者や企業へ支援を行う支援機関の略称です。

呼び方の由来は、支援機関の正式名称にある「・(ナカポツ)」をとっているみたいです。
参考:https://tryze.biz/media/employment-assist/nakapotsu/

当初、私が障害者雇用を検討し始めた際は、

  • 今の会社で働き続けられるか?転職も視野に入れるか?
  • 一般雇用か?障害者雇用か?
  • そもそも仕事を続けるべきか?

と、悩んでいました。

転職にしろ会社に相談するにしろ、独力で対処することに不安だったので事前にナカポツに相談をしていました。

私がお世話になっているところでは、初回の利用登録は対面で面談必須でしたが、2回目以降はオンラインでの面談で対応してくださっています。

利用を検討される際は、電話やメール等で事前に問い合わせすることをおすすめします。(私も電話で事前に相談しました)

求人情報の収集に使ったツール

  使いやすさ 実際の役立ち度
ハローワーク
人材エージェント
求人ナビサイト

ハローワーク

私にとっては使い勝手が悪く、実際に利用していないため役立ち度の項目は空欄にしました。

居住地を管轄するハローワークに直接訪問の上で利用登録が必要でした。アクセスが悪いので断念。

また、利用登録の際には主治医の意見書が必要と言われました。これは全国共通の決まりのようです。

オンラインでの登録可否を訪ねてみましたが、私が住んでいる地域を管轄しているハローワークでは不可とのことでした。

人材エージェント

利用に際して、個人情報の入力やエージェントとの面談が必要でした。

ハローワークの次に手間がかかりましたが、対面でなく面談やオンラインでの面談が可能だったため、ハードルは低いと感じました。

ただ、私が地方在住ということもあり、障害者雇用専門のエージェントでは紹介してもらえる案件数が少なかったです。

個人的に、案件数の多い都心に住んでいる方にはおすすめです。

求人ナビサイト

エージェントと同じく、個人情報の登録が必要ですが面談は必要ありません。

ただし、1年を通して観察していましたが、案件の入れ替わりは鈍く、同じ会社が同じ案件を掲載しているように見えました。

「障害者雇用支援月間」という期間があるのをご存じでしょうか?

実は、障害者の雇用を促すために全国的な取り組みとして、毎年9月に障害者向けの求人情報が増える時期があります。

障害者雇用を扱う求人サイトだけでなく、普通の求人サイトでも案件数が増えるため転職を考える際には狙い目です。

求職活動をして感じた「採用されやすい人」の特徴

エージェントと話しているときや会社と交渉している際に感じたのは、採用されやすいのは「勤怠が安定しやすい人」や「週30時間以上働ける人」では?ということでした。

勤怠が安定しやすい人

明言されたわけではないのですが、エージェントと話している際に「精神障害は、身体や聴覚に比べて少し難しい」というニュアンスの話をされたことがあります。

たしかに、精神疾患ではどうしても気分の波があるため勤怠も不安定になりがちです。

企業側としては、「今日は来られるのか?明日は?来週は?」ということで、勤怠が不安定だと仕事が任せづらい側面が強いかもしれません。

「“障害者雇用”とはいっても、人件費が発生する以上はそのぶん働いて欲しい」と思うのはある意味当然ですよね…

週30時間以上働ける人

実は、政府が企業に対して「障害者を採用せよ」とノルマを設けているのをご存じでしたか?

民間企業は、一定の割合で障害者を雇わなければならないことになっています。採用ノルマを達成しないと、企業へ行政指導が入ります。

採用した障害者の労働時間によって雇用率を算出するため、勤務時間が短いとノルマが達成しづらくなってしまいます。

20時間以上30時間未満 0.5ポイント
30時間以上 1ポイント

※精神障害の場合(身体と知的では基準が異なる)
※引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/000859466.pdf

要は「6時間働けるAさんは1ポイント達成、4時間だけ働けるBさんを採用すると0.5ポイントのみ」ということですね

そのため、企業は1日6時間以上働ける人材を欲していると考えてよいと思います。

気力や体力が枯渇しやすく、低い負荷を一定にしか掛けられない私としては、ハードルの高さを感じるところではありました。

総括すると、精神疾患を持つ身として、上記2つの条件を満たすのはハードルが高いなというのが正直な印象です。

実際の雇用条件は?給料や雇用形態は?

精神疾患のある私の給料

私は、月給制ではなく時給制での勤務です。時給は東京都の最低賃金を少し上回るくらい。

身バレ防止のために、少し金額をぼかさせていただきました~

私は週30時間未満で勤務しているので、皆勤だと月の手取りは10万円ほどです。

雇用形態は?正社員で働けるか?

私は「契約社員」でスタートしました。

(というか、もともと契約社員で働いていたので、そのまま変わらず契約を更新しました。)

気になるところは「正社員として働けるか?」ということだと思います。

私の職場では、障害者雇用で働いている社員にも正社員登用制度があります。

正直なところ、精神疾患で正社員として働いている方は多くありませんでした。しかし、ゼロではありません。

そのため、精神疾患を患っているからといって、正社員で働くことは諦める必要はないと考えています。

個人の印象としては「中途でなく新卒入社の方」と「勤続年数の長くスキルの安定している方」の正社員比率が多いと感じました。

「仮に非正規雇用でスタートしたとしても、安定した勤怠で職務を遂行することで正社員の可能性もゼロではない…?」と、様子をうかがっているところです。

障害者雇用で働くメリットとデメリット

メリット

  • 休みやすい
  • 困りごとを相談しやすい
  • 勤務時間が融通されやすい
  • 完全在宅勤務の部署に配置

デメリット

  • スキルアップは厳しい
  • 給料が低い
  • 求人数に限りがある
  • 社内ニートになりがち

障害をあらかじめ伝えてあるので、勤怠や勤務上の困りごとが相談しやすく、通院で休みたい旨も伝えやすいです。

ただ一方で、社内ニートになりがちで気まずさも感じています。なかなか勤怠が安定しない分、まだ担当業務がないのです…

まとめ:実際に勤務してみた感想

配慮事項について

ぶっちゃけ会社によりますが、私の場合は制度的な配慮事項は思ったほどありませんでした。

通院休暇の制度は無いため欠勤扱いで無給ですが、先述の通り病気のことを伝えてあるので休みやすさはあります。

また、合理的配慮事項にも、職種と障害の相性があると感じました。

私は精神障害ですが、対人折衝を含む仕事をしています。

イレギュラーや急な変化に弱く、差し込みや五月雨の業務依頼は控えて欲しい旨を伝えていました。しかしどうしても業務上の都合で発生することもあります。

会社で働く以上は、配慮に限界があるのはやむを得ないと考えています。

採用後に「続けられるか?」が重要

障害の有無は関係ありませんが、仕事は続けられるかどうかが重要だと思います。

「仕事に就けた!はい成功!おしまい!」という訳にはいきません。むしろ採用後が始まりであり、本番です。

だからこそ、求職活動や就労を開始するタイミングは慎重に見極めるべきだと思います。

雇用先に迷惑をかけないということもありますが、自分の自信を損なわないためにも。

私にとって、双極性障害と付き合いながら仕事と育児を両立するのは、心身ともに大きな負担でした。

だからこそ同じような境遇の方には、自分だけで考えるのではなく、医師や支援機関とじっくり相談してから決めて欲しいと思っています。